和食器をお使いになる前に〜初めて下ろす時の注意点〜

皆さんは、購入された食器を使い始める時、どういった処理をされていますか?

以前、mixi内のとあるコミュで、この話題で盛り上がったことがあります。
私も、お客様にお勧めしていた方法があったのですが、それが果たして最適なのかはっきりとした自信はなかったので、いろいろと諸先輩方のご意見をお伺いしました。

その内容を、私自身のおさらいの意味も込めて、ここにまとめて記事にしようと思います。

ご年配の方から、「器は下ろすときに煮沸した方が丈夫になる」と教えられたという方もいらっしゃるかと思います。
著名な銀座のギャラリーのオーナーのご著書にも、備前焼は煮沸すると耐熱性が強まる、と書いてあるそうです。

なぜ「陶器は煮沸せよ」と言われるようになったのでしょうか。


陶芸家Aさん曰く「昔は薪の窯で全て焼いており、しかも運搬に藁を用いていた。つまり、煮沸することで汚れを落とし殺菌するためだ」と。
なるほど!確かに、そうですね。

では、現在ではその必要はないのでしょうか。

結論から言うと、ケースバイケースとなります。

磁器の場合、土のきめ細かさに加え、1300℃近い高温で焼き締めるため、焼成後の器肌の気泡はほぼ無くなるそうです。
このため、汚れにくい。

対して陶器の場合。
これは器によって使ってある土の種類も様々ですから、一概には言えません。
荒めの土を使っている場合や楽焼や志野のもぐさ土のように柔らかい器の場合、器肌の気泡が大きく、その中に食物の汚れが溜まるとカビの温床になる可能性もあります。
それが汚れとなっていきます。

その場合、その気泡=隙間にあらかじめ目止めをすればいい訳です。

土鍋の場合、米のとぎ汁で入れて炊きます。このことで目止めを施す訳です。

茶器の場合、おかゆを入れて、ストーブの上に乗せてゆっくり煮るのが良いそうです。
すると貫入やヒビに入ったおかゆが熱で糊になり硬化して水を通さなくなるのです。

陶器の土はそれこそ千差万別なので、お買いになられた窯元さんでお勧めの方法が良いでしょう。

煮沸すると強度が増す、というのは化学的根拠がないようにも思います。
(どなたか詳しい方が居られたら、ご教授願います)

ちなみに私の器の場合、洗浄の意味も込めて水から沸騰して20分、その後自然冷却、という方法をお勧めしています。
「わら白」の作品の場合、お米の研ぎ汁か、お米をひとつまみ入れても構いません。
ただし、よくよく乾燥させてください。
電子レンジの「あたため」をされても大丈夫です。

しかし、一番肝心なのは、日頃のお手入れであることは間違いありません。

○使用する10分前くらいから水に浸しておく。
○使用後はなるべく早く洗う。
○洗ったあとは、よく乾燥させてから水屋等に保管する。

気泡に水をあらかじめ染み込ませ、すぐに洗うことで食物の侵入を防ぎ、よく乾燥させることによってカビの繁殖を防げます。

そうです。
当たり前のことなんですけどね。

万が一、カビが発生した場合は、漂白されれば大丈夫です。

窯元にとって、この汚れの問題は避けて通れません。
お客様のニーズに応えるために、いろいろと試行錯誤するのですが、実用性と美との兼ね合いというのが一番難しいものです(^^ゞ

我々もいいものを沢山の方のお手元にお届けしたい、と日々努力しています。
ですから、皆さんもほんの少しの手間を惜しまずに器と接していただけないでしょうか。
このことによって、よりよい器ライフが送られることと思います。

・・・・・

私の作品には貫入釉を用いたものがありますが、これなどは窯元さんによっては「汚れるから使うべきではない」とお考えの方もいらっしゃいます。
まあ、この貫入についての私の考えを述べるとまた長くなりますので、機会を改めて(^_-)


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