蹴ろくろ〜体のリズムが作り出す絶妙なライン・前編

僕の普段の仕事の中心は、「ろくろ」です。
ろくろにもいろいろと種類があり、一般的なものは電気ろくろです。
これは電気モーターによってろくろが廻り、ペダルによって回転数を調整します。

手で回す「手ろくろ」は、今では茶器、お茶碗類を専門に作る窯元さんで見られるくらいです。
ろくろの端に空けられた穴に、棒を差し込んで回します。
もちろん、陶芸教室でおなじみの、手びねりなどに用いる小さいものも、手ろくろです。

他にも、大型の瓶(かめ)を作る時などに用いられる、一人が横寝になって足で蹴って回し轆䡎士が水引き(ろくろを挽くこと)するものもあります。

僕がいつも使用しているのは、福岡・飯田鉄鋼製の蹴ろくろです。
蹴ろくろ1


蹴ろくろ2
蹴ろくろ3

ケヤキ製で、鉄製の心棒を地面に埋め込んで据え付けられています。
土を置く天板と、足で蹴る蹴り板で構成されています。

動力は、もちろん人力。
自分の足で蹴ってろくろを回し、同時に水引きします。
下半身のリズムと、上半身のリズムを一致させる必要があります。
僕は陶芸を始めた当初、電気ろくろで練習しました。
その後、有田窯業大学校ろくろ科に行くのですが、ここで初めて蹴ろくろを使いました。

一週間、土殺し(粘土のねじりをとるために上げ下げする作業)をひたすら練習しました。
もちろん、電気ろくろでは苦なく出来ていたものです。
お尻の皮が、剥けました(^^ゞ

ちなみに、唐津・有田では水引きは時計回り、削りは逆回りです。
同じ九州でも、小石原では水引きも削りも反時計回りです。

実際の作陶風景はこちらから

また、当時学校に月曜から金曜通い、週末を唐津・隆太窯で過ごす生活でして、つまり有田と唐津で同時に違う蹴ろくろを練習していたのです。
これが大変でした。
ご存知の通り、有田と唐津では用いる土が違います。
有田では天草陶石を、隆太窯では玄海町産の赤土を主に用いていました。
土が違えば、考えも違います。当たり前のことです。
一口に蹴ろくろと言ってもろくろの構造も違えば、蹴り方から水引きの仕方まで、違います。

その後、隆太窯には内弟子としてお世話になるのですが、修業時代には有田と唐津の違いが自分の中でなかなか整理がつかず、苦労しました。
オレって、向いてないのかなー、とか(笑)

独立して、自分のスタイルを模索して行くうちに「白さつま」の土と出会い、そのことによって有田と唐津の違いがはっきりと認識出来たように思います(この話は機会を改めて)。
どこが、というのはなかなか言葉で表しにくいのですが。

有田では、腰がなく(水引きしにくい、へたりやすい)肌理の細かい磁器土を、その特性を生かすためにきれいにろくろし、削りもきっちり高台だけでなく器の口までも削って“機械で作った様な”ラインを作り出します。

対して唐津では、腰があり砂や時には小石も含む比較的荒めの土、その特性を生かすために基本的にろくろのみの成形で、削りも極力少なくします。このことで、“土味”を生かすのです。
隆太窯では「当てゴテ(例えば飯碗ならばそのラインを出すために、あらかじめ狙いのカーブで作ったコテ。一定の形を素早く大量に作るために用いる)」を用いず、「牛ベラ」のみを用います。
つまり、牛ベラの動きと左手の指の感覚のみで、あらゆる器を作って行きます。
(後編に続く)


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