蹴ろくろ〜体のリズムが作り出す絶妙なライン・後編

前編より続く)
牛ベラのみで器を作る場合、湯呑なら湯呑、飯碗なら飯碗の形をはっきりとイメージしながら水引きする必要があります。
つまり、必要な土の量をとり、伸ばしていく工程のみで完成まで持って行きます。
当てゴテを当てる作業を省略している訳です。
それは決して手抜きではなく、それなりの技術が要求されるものです。

熟練した職人さんは、当てゴテ無しで一定の大きさ・形の器を大量に作っていきます。

ちょっと話は変わりますが、よく蹴ろくろは大変ではないですか?という質問をお受けします。


水引きするスピードは、電気ろくろとそんなに変わりません。
本当に熟練した職人さんの中には、湯呑を一日1000個も引かれる方がいるそうですが、まあそれは特別として(^^ゞ、土練りをせずろくろだけに集中出来てなおかつ引きやすい土ならば、僕が蹴ろくろでしても300個以上、場合によっては500個くらいは出来ます。

白さつまの土だと、100個がせいぜいですが。

実際の作陶風景はこちらから

疲労はさすがに蹴ろくろの方が疲れるかなあ。全身労働ですから。
でも、電気ろくろも結構疲れるものです。

また、蹴ろくろでは思いがけない怪我をしてしまいました。
両足親指の付け根の骨を、疲労骨折してしまいました。
足で蹴り続けるため、割れてしまったのです。
足踏みミシンで仕事をされている方や、バレリーナの方にも多いそうです。
バレリーナと一緒かぁ(*^_^*)

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電気ろくろと蹴ろくろで差がでるのは、削りの工程です。
削りは電気ろくろの方が早くて、楽でしょう。

ではなぜ僕は蹴ろくろにこだわるのでしょう?

蹴ろくろをしよう、と考えた当初は、人と同じことをしたくない、という単純な理由でした。
実際始めてみると、これは自分に合っているかも、と思いました。
全然、いやじゃなかったんですよね。お尻がむけても(笑)
もちろん痛かったですよ。
何なのでしょうね?

隆太窯に伺ったのも、蹴ろくろで作陶されていることが大きな理由のひとつでした。

今年6月で独立して丸9年、早10年目に突入しますが、ここ数年、ようやく蹴ろくろの面白さが分かって来ました。
蹴ろくろは、全身を使って作業します。
蹴るリズム、スピードと、水引きをするリズム、スピードが一致するとき、絶妙のラインが生まれてくるのです。
しかも、「白さつま」という磁器土のきめ細かさを持ちながら土物の作り方が出来る土を使うことで、その良さがいっそう引き立ちます。
つまり、磁器のように薄く軽く水引きし、しかし土物と同じように削りを極力しない、そのことによって有田の清潔感と唐津の手作り感を同居させることが出来るようになったのです。

自分の理想に、ようやく技術が追いついて来ました。

八十一の器は、蹴ろくろでしか生み出せない。
今ではそう確信しています。


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