白い土の器の魅力〜白さつま〜前編

僕は現在、「白薩摩」という種類の土をメインに作陶しています。
今回はこの土について、お話ししたいと思います。

「白薩摩」とは、薩摩藩、今の鹿児島県で生産された焼き物です。
島津家が外貨を獲得するため、要するにヨーロッパへの輸出の目的で朝鮮から陶工を連れて来たのが始まりだそうです。
このことは有名な以下の本に詳しいです。
故郷忘じがたく候 (文春文庫)
故郷忘じがたく候 (文春文庫)
司馬 遼太郎

僕は鹿児島で修業した訳ではありません。
はっきり言えば、縁もゆかりもありません。
この土を使い始めたのは、ある意味偶然の出会いからでした。


独立した当初、うちに据えた窯は電気窯でした。
池内焼の緒方修さんから譲っていただいたものです。
緒方さんは県の工業試験場のご出身で、県内では珍しい地元の土を使って作陶されていた方です。
唐津に行く以前から、緒方さんの所へ伺っていました。

譲っていただいた電気窯は、酸化焼成しか出来ないものでした。
電気窯は、電熱線で温度を上げていくものですから、そのままの構造では密閉した状態で土を焼き上げていくのです。
薪窯にしろ、ガス窯にしろ空気による炎の火力で温度を上げていきますが、この時の空気の量を調節することによって、「酸化の雰囲気」「還元の雰囲気」を作り出し、それが焼き上がりに大いに影響します。

電気窯では酸化焼成、しかしほぼ完全な酸化焼成になるため、焼けるものが限られました。
そこで材料屋さんに相談したところ、「白薩摩」の土はどうか、と勧められたのです。

一般的な磁器は、還元で焼きます。
この「白薩摩」は酸化焼成でクリーミーな白になります。

現在は、3種類の「白薩摩」の土をブレンドしています。
いろいろと試行錯誤の結果、これに落ち着きました。

この土との相性のよさのひとつは、水引きです。

磁器に間違えられる様なきめ細かさを持ちながら、唐津の土のように極力削りをしないろくろも出来る。
そのため修業時代に苦労した有田と唐津の違いが、僕の中で発酵熟成したかたちでこの土のよさを引き出します。
やはり土ものに比べて腰が弱いので、土練りも菊練りではなくいわゆる“磁器練り”をする必要があります。
水引きも決して引きやすいものではありません。
反面、薄手に作ることが出来ます。

僕は李朝の白磁が好きなのですが、宮崎らしさと、李朝の大らかさはずっと似ているなあと感じていました。
この土を使うことで、それが出せるのではないか。
有田の清潔感と、唐津の手作り感を同居させることが出来るのではないかと考えました。

ようやく、自分のコンプレックスでもあった唐津と有田のジレンマを、最大の武器にできる機会を得た気がしました。
(後編に続く)


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