なぜ峠に登るのか?そこに峠があるから。というわけでもない。それもあるけど。
峠道とは、古来から山のこちらと向こうとで人の行き来があるもの。そこに暮らしが根付き、文化の交流があり、時には婚姻も交わされてきた。
そんな事に思いを馳せながらペダルを踏む。それこそ旅情というものだ。
前日は日が落ちてから、激しい雨に見舞われた。
雷も鳴り、傍らには渓流もあるため、もしや氾濫でもしたら?と気がきではなかった。
風も強く、一度はペグが飛ばされ、ずぶ濡れになりながらテントを張りなおした。
さすがに山の上では夏用のシュラフに潜り込んだ。
しかし川は、源流に近いためか、あれだけの大雨にもかかわらず、朝起きたら清流のままだった。
あまり眠れない夜を過ごしたが、この日も早朝6時半より出立する。
ところが、すぐに“日本三大秘境”五家荘の凄さを思い知る事になる。
キャンプ場を出てR445に出るまでのたった約7kmに、小一時間も掛かってしまった。なんてこった。
これから、今回のツーリング最後の山場、二本杉峠を目指す。
昨日の疲れが微妙に残り、しかも朝も早よからきついアップダウンを走ってきたものだから、先が思いやられる。
この日も天気は不安定、できれば夕立、雷の前にキャンプ場に着きたい。
R455佐倉荘前で休憩をとり、いざ峠へ。佐倉荘から見上げる山肌に白いガードレールが、切れ切れに見える。ほう。
勾配はさほどはきつくない。6〜8%の坂が続く。
きつくない、と言っても距離がある。約12km続くのだ。
しかし、途中の景色は絶品だ。
山深い九州山地を堪能できる。
峠に近づくにつれ、道が広くなる。不思議だ。
平行して旧道らしき跡もあるが、荒れていて通行不可。
旅情といえば、最近の峠道は昔の峠道とは厳密に違っていることが多い。
昔の道は、人が歩く、或いは馬やせいぜい馬車が想定されていたもので、道は狭いが、傾斜も極端にきつくはない。その変わり遠回りではある。
近年になって整備された道路は、当然のことながら自動車メインの造りだ。
しかも、人力ではなく重機を使っているから、ある意味「暴力的に」造ってある。
走りやすいが傾斜もきつく、旅情に欠ける傾向がある。
トンネルも実はあんまりありがたくない。山の中ゆえ、幅がギリギリしかなく、自転車(歩行者はもちろん)が安心して通る余裕などない。
旧道の峠を通った方が、景色もよく、楽しい旅ができることが多い。
あくまで自転車目線だが。
1時間半かけて、峠到着。9時。
いやあ、きつかった。
ゆっくりと休んで、さて下界へ降りようかと峠を下り始めた。
なんじゃこりゃ!
降り始めてすぐはそうでもないが、すぐにまじか!と目を剥くような激坂になった。
8〜10%、ところによっては12%越えはあるだろう。距離はやはり12kmくらいはある。
これを逆に登ることを考えると、さすがに肝が冷える。なんせ、自重100kg超だからなあ。
それだけではない。木材を山と積んだトラックが猛スピードで走っている。
下りは1時間ほど。
下界は暑かった。
ここからは幹線道路であるR218を旧矢部町へ向かう。
霊台橋で休憩。いい橋だ。10時。
これから万坂隧道までの約8km、5%ほどの登りが続く。
ところがこれが意外に効いた。
暑さのせいが多分にあると思うが、これまでの峠に比べたら全然楽勝のつもりだったのに、きついのなんの。かなりばててしまった。
考えてみれば、五家荘との気温差は10度くらいあったのでは?
昼頃、山都町役場付近に着く。Aコープで買い出しをすませる。
一旦R218まで戻り、山都町野尻県道141号線へと入る。
しばらく行くとすぐに工事で通行止めになっていたが、近所の方に道を尋ね、つるばみキャンプ場を目指す。
ちょっと登った後は、高原ロードを軽快に走る。
気持ちいい!
15時過ぎにキャンプ場着。
このキャンプ場、オススメ。
静かで気持ち良い。涼しいし。
走行距離 60.9km